第66回NHK杯(糸谷八段vs菅井七段)の感想
棋譜は下記の公式サイトでご覧ください。(月曜日に更新されます)
NHK杯テレビ将棋トーナメント
<感想>
序盤は糸谷八段先手の横歩取り。後手の菅井七段はやはり、52玉+72銀型でした。
今年度になって、中継されている対局の2回に1回はその形ではないのかと思うほど、頻繁に見かけます。
しかし、中盤以降は横歩取りなのに持久戦模様になっていて、菅井七段は右玉、糸谷八段は風車に似た布陣の力戦形。
67手では糸谷八段の地下鉄飛車が実現して、その辺りから番組を見た人は、まさかこの対局が横歩取りだったとは想像もつかなかったかもしれません。
指し手の速さはいつもの糸谷流で、菅井七段が指し終わったかと思いきや、即座に着手していたのは毎度お馴染み。感想戦も早送りになっているのかと思うくらい、すごいスピードで指し手が進んでいました。
さて、100手目の局面。菅井七段が果敢に攻めて盛り返し、後手もやれそうな雰囲気になっていました。
しかし、手元の激指14は菅井七段が100手△6五歩と指した瞬間にゲージが少しだけブレて先手優勢。
「そうは言っても、激指が示す96桂なんて。いくらプロでもせっかく作った地下鉄飛車の狙い筋を遮る場所に桂馬を打つのだろうか。しかも、直前まで小競り合っていた地点とは全く別の場所。」そう思いながら観ていました。
私の疑念をよそに、糸谷八段は駒台の桂馬をつかみ、パシンと▲9六桂!
その瞬間、解説の井上九段も「はー、これは見えない手でしたねー。」と感心した様子。
やはり元A級棋士でも見えていなかったほどの一手で、さすがは竜王を獲った棋士。感想戦では第一勘だったと涼しい口調で語っていました。
その一手で形勢はハッキリして、完全に糸谷八段ペース。
菅井七段の猛追を際どく交わして、最後は後手玉を即詰みに討ち取り対局終了。
▲9六桂も好手ですが、128手の先手玉詰めろの局面で変に受けるのではなく、即詰みで決めるところも、素人にとってはプロの強さを実感する瞬間だったりもします。
本局は横歩取りでしたが、中盤では別の力戦形に変わり、どうやって仕掛けていくのか中盤の攻防がとても見応えのある将棋でした。
菅井七段が1回戦で負けたのは、勿体無い気もしました。
<コンピュータの形勢判断>

※青色は激指14七段+、赤色はGPS将棋
※コンピュータの判断が正しいわけではありません。
- 関連記事
- No Tag
2016-07-17 │ NHK杯 │ コメント : 4 │ トラックバック : 0 │ .